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「GrWin グラフィックス・ライブラリ」は多くのコンパイラに対応していますが, ここでは付加的な dll を必要とせず,単独で動作可能な Windows アプリケーションの作成が可能で, しかもフリーな MinGW-2.0 を使用する場合に限定して説明します。 MinGW の使い方についてここに日本語情報があります。 MinGW-2.0 を使わない場合には以下の b. は読み飛ばしてください。 GrWin で利用できるほかのコンパイラ・システムについては「利用可能な環境」を参照してください。

インストール先や実行コマンドなど,自分の環境に合わせて自由にアレンジ可能ですが, 何をやっているかがよくわからない方は以下の手順を忠実に実行してください。

a. エディタの準備
b. MinGW-2.0 のインストールとアンインストール
c. 「GrWin グラフィックス・ライブラリ」のインストールとアンインストール
d. f77chk について
e. サンプル・プログラムの実行

a. エディタの準備

エディタとは,プログラム(ソース・コード)を打ち込んだりプログラムを修正したりするときに使うプログラムのことです。 Windows には「メモ帳(notepad.exe)」という簡易エディタがついているのでそれを使うこともできますが, 機能もあまりなく,多くの人にとって使いやすいものとはいえないでしょう。 エディタは,プログラミングを行う際に使用時間の最も長いものになりますので, この際ぜひ自分のお気に入りのエディタを入手して手になじませておいてください。 市販やシェアウェアのエディタはいろいろありますが,ここでは, フリー・ソフトでなかなか使いやすいものを二つほど紹介しておきます:
TeraPad: http://www2s.biglobe.ne.jp/~t-susumu/toclip/library/tpad.html

サクラエディタ: http://members.tripod.co.jp/sakura_editor/

b. MinGW-2.0 のインストールとアンインストール

MinGW-2.0 を使わない場合は c. に進んでください。
  1. まず, MinGW の配布元から必要なファイルを取り寄せます。 使用目的に応じて個別のパッケージをダウンロードすることもできますが, 自信のない人は必要なものすべてが 一つのファイルに圧縮されたもの( 2003.06.01 現在の最新版は MinGW-2.0.0-3.exe)をダウンロードして,どこでもよいので適当なフォルダ( C:\tmp )に保存してください。 MinGW-2.0.0-3.exe はインストーラ付の実行ファイルですので,実行して指示に従うだけで MinGW システムのインストールが一応終了し,この段階で, GNU-C/C++ や GNU-Fortran のコンパイラなど,ソースファイルから実行ファイルを生成するためのすべてのファイルが整ったことになります。ただし,ファイルがインストールされた場所(フォルダ)をコンピュータが認識していませんのでこのままでは使えないことに注意して,以下を熟読してください。

    以下では MinGW-2.0.0-3.exe の実行時の指示に従って, MinGW システムを C:\MinGW にインストールしたものとして説明を続けます。 ほかのディレクトリにインストールした場合には C:\MinGW を自分の環境にあわせて読み替える必要があります。

    ダウンロードしたファイル MinGW-2.0.0-3.exe はこれで用済みですので消去しても差し支えありませんが, ディスク容量に余裕がない場合を除いて,再インストールが必要になったときのためにどこかに保存しておくことをお勧めします。

  2. MinGW は基本的にコマンド・プロンプト(Windows Me/9x では DOS プロンプト)で使用しますので, インストール・フォルダに作成されたサブフォルダ bin に「パスを通す」設定を行う必要があります。 パスを通すというのは,コマンドが実行される際にそのコマンドに対応する実行ファイル(*.exe)やバッチファイル(*.bat)がどこにあるか(これは,インストールを行ったあなたしか知りません)を OS に教えることです。 方法はいくつかありますが,ここでは OS の種類に依存しない方法を紹介します。 まずエディタで,mingw.bat というファイル名で内容が

    PATH=C:\MinGW\bin;%PATH%

    の1行だけのバッチ・ファイルをインストール・フォルダ( C:\MinGW )に作成します。 正しく作成できたかどうかは

    C:\MinGW>type C:\MinGW\mingw.bat
    PATH=C:\MinGW\bin;%PATH%

    C:\MinGW>

    で確認できます。確認ができたらこれで MinGW システムのインストール作業は一応終了です。 コマンド・プロンプトを開いたらその都度 C:\MinGW\mingw を1回打ち込むことで, そのコマンド・プロンプト上で MinGW を使うことができます。

  3. MinGW システムが正しくインストールできているかを確認するために, インストール作業で使用したコマンド・プロンプトのウィンドウを閉じてから, 新たに別のコマンド・プロンプト・ウィンドウを開きます。 まずパス設定のためのバッチ・ファイル mingw.bat を実際に起動してみます:

    C:\MinGW>C:\MinGW\mingw

    C:\MinGW>PATH=C:\MinGW\bin;.....
    ....
    C:\MinGW>

    これで,MinGW が使用可能になったはずです。これを確かめるために 'gcc -v' を打ち込みます:

    C:\MinGW>gcc -v
    Reading specs from C:/MinGW/bin/../lib/gcc-lib/mingw32/3.2/specs
    Configured with: ../gcc/configure --with-gcc --with-gnu-ld --with-gnu-as --host=
    mingw32 --target=mingw32 --prefix=/mingw --enable-threads --disable-nls --enable
    -languages=f77,c++,objc,ada --disable-win32-registry --disable-shared
    Thread model: win32
    gcc version 3.2 (mingw special 20020817-1)

    C:\MinGW>

    上のように表示されれば MinGW-2.0 のインストールは無事終了です。

    なお,以上のインストール手順に従った場合,MinGW を使うにはコマンド・プロンプトのウィンドウを開くたびに1度だけですが毎回, C:\MinGW\mingw を打ち込んでパス設定を行う必要があります。 これが面倒な場合には,使用している OS の種類に依存しますが, 次のようにしてパス設定を自動化することもできます:

     (方法1: 推奨)
    デスクトップ,スタート・メニューまたはタスクバーに,MinGW を利用するためのコマンド( DOS )・プロンプトのショートカットを作成(右ボタンでドラッグ)し, その「プロパティー」の設定でスタート時に C:\MinGW\mingw が実行されるように設定します:

    • Windows Xp/2000/NT4 の場合: 「コマンドプロンプトのプロパティー」の「ショートカット」タブで,「リンク先」を

      %SystemRoot%\system32\cmd.exe /k "C:\MinGW\mingw"

      とします。

    • Windows Me/9x の場合: 「MS-DOS プロンプトのプロパティー」の「プログラム」タブで,「バッチファイル」を

      C:\MinGW\mingw.bat

      とします。

    どちらの場合にも,ショートカット名を「MinGW」などとし, プログラム開発を行うフォルダを「作業フォルダ」として設定するとよいでしょう。

     (方法2: Windows Me/9x の場合)
    Windows Me/9x では DOS プロンプトを開くと C:\autoexec.bat が最初に実行されます。したがって C:\autoexec.bat の最後に mingw.bat の内容を加えておけば自動的に MinGW のパスが設定されますので,DOS プロンプトを開いた直後から MinGW を使うことができます。 ただし,この方法では MinGW を使わない場合でも C:\MinGW\bin がパスの先頭に設定されてしまうので,場合によって不具合が生じる可能性があります。

  4. MinGW-2.0 をアンインストールするには,「コントロールパネル」の「アプリケーションの追加と削除」から 'MinGW 2.0.x' を選択して,「変更と削除」ボタンを押してください。

c. 「GrWin グラフィックス・ライブラリ」のインストールとアンインストール

GrWin グラフィックス・ライブラリのインストーラ版( lGrWn0999a-XXX.exe; XXX はコンパイラ・システムの省略名) を使ってインストールを行うには,GrWin で利用できるコンパイラ・システムがインストールされていて,利用可能になっている必要があります。 自分のコンピュータにまだコンパイラがインストールされていない場合は前項を参照してください。

GrWin のインストールは自分の環境に合った GrWin のインストーラをダウンロードして実行するだけです。 どのようなファイルがインストールされるかは「配布ファイル」を参照してください。

GrWin をアンインストールするには,「コントロールパネル」の「アプリケーションの追加と削除」から 'GrWin 0999b for xxx' を選択して,「変更と削除」ボタンを押してください。

d. f77chk について

インストーラをつかって GrWin をインストールすると, perl スクリプト言語で書かれた FORTRAN77 のソースコード・チェッカ f77chkl.pl も自動的に インストールされます。 これにより,perl がインストールされていれば,

C:\GrWin\demo> f77chk.pl trigfn.f

などとするだけで,Fortran のソースコードで GrWin ライブラリの各ルーチンが正しい引数の並びで呼ばれているかどうかなどの チェックを行うことができます。コンパイルとリンクの時には何もエラーが出ないのに,実行時にエラーが出て異常終了するときなど, f77chk.pl を使うことでエラー個所を発見できる場合があります。 コンパイルとリンクでエラーが出なくなったら一度 f77chk.pl でチェックを行うことで, プログラム開発の能率が大幅に向上するはずです。 より詳しくは配布ファイル中の f77chk.txt を参照してください。

e. サンプル・プログラムの実行

以上でインストールは完了しました。MinGW-2.0 以外の開発環境を使うときには,下の説明で gwf77 や gwgcc などのバッチコマンド名を対応するものに読みかえてください。

それでは,試しにサンプル・プログラムを動かしてみましょう:

C:\GrWin>cd demo
C:\GrWin\demo>gwf77 trigfn
C:\GrWin\demo>gwgcc polygon
C:\GrWin\demo>dir trigfn.*

と入力してみてください。 サンプルの Fortran ソースファイル trigfn.f から実行ファイル trigfn.exe が,また,C のソースファイル polygon.c から実行ファイル polygon.exe が生成されているはずです。 ここで失敗するようなら,もう一度 MinGW のインストールから調べ直す必要があります。 trigfn.exe の生成に成功したら

C:\GrWin\demo> trigfn

として実行してみてください。 グラフィクス・ウィンドウが開いて sin 関数と cos 関数がプロットされ「フォント」ダイアログ・ボックスが開けば Ok です。 ダイアログ・ボックスの各項目を適当に選択してから [OK] ボタンを押せばダイアログ・ボックスは閉じます。 マウス・ポインタをウィンドウ内に移動して適当な点で左ボタンをクリックすればその点にマークが表示され,下部のステータスバーにはその点のワールド座標系の座標が表示されます。 このサンプル・プログラムを終了するには原点(縦軸と横軸の交点)付近で左クリックしてください。 「Message from grwnd」のダイアログボックスが開きますので,[はい(Y)] ボタンを押してください。 これで,グラフィクス・ウィンドウが閉じて,テストは完了です。 ついでですので polygon.exe も実行してみてください。 動作は polygon.f をコンパイルしたものとまったく同じですので demo\Polygon.txt の説明を参照してください。

demo フォルダ内の他のサンプル・プログラムについても gwf77 コマンドを用いて上と同様に実行ファイルを生成してから実行し,動作確認をしてみてください。 同じフォルダ内の *.txt ファイルには対応するサンプル・プログラムについての簡単な説明があります。 MinGW-2.0 で、すべてのサンプル・プログラムの実行ファイルを生成するには、同じフォルダで単に

C:\GrWin\demo>make

を入力してください。 VC++ と VF がインストールされている場合には

C:\GrWin\demo>nmake -f make.mak

とすることで、すべてのサンプル・プログラムの実行ファイルが生成されます。 VC++ がインストールされていて,C で書かれたサンプル・プログラムのみの実行ファイルを生成するには、

nmake -f make.mak C

としてください。Fortran のみの場合には C の代りに F としてください。



Tsuguhiro TAMARIBUCHI <tamari@spdg1.sci.shizuoka.ac.jp>

Last modified:  Sat Jun 28 17:43:13 JST 2003